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週刊ハーツ

2017.10.07

10月07日 キャッチボールプロジェクト

 前日の夜から降り続いた雨のために、10月7日(土)のYBC-67対南海ハーツの試合は早々と中止が決定していた。開催予定だった外濠公園総合グラウンド(通称:三角公園)は水捌けがあまり良くないためだ。しかしこういう日に限って、天気は回復する。予報より早く、朝には雨がやみ、曇り空になったかと思えば、お昼にはなんと晴れ間も見え始めた。
 判断が早すぎたのではないか…記者は諦めきれず、外濠公園に足を延ばした。

 そのときの外濠公園の状態である〔左上〕。あめんぼスイスイの絵に描いたような水溜まり。これではちゃんとしたプレーはできまい。湿った土を踏んでみる〔右上〕。この段階で完全に「これでは無理」と気持ちを吹っ切ることができたが、このままでは取材もできない三連休となってしまう。

 記者はここで想像力を働かせてみることにした。この足跡、ロマンティックな砂浜で戯れる若き男女のものとしたらどうだろう。一気に青春ムービーが脳を支配した。よく見ると、ハーモニーが美しい男性デュオのシングルスベスト盤のジャケットにも似ているではないか。
 記者はあの名曲『蕾』を口ずさみながら、外濠公園をあとにした。今年のドラフト会議まで約3週間。この日は、南海ハーツの中に指名される選手がいないか偵察に来たわけだが、それも叶わなかったので、公園を“はしご”してみる気になったのだ。外濠公園から西池袋公園へ。記者の足は自然と北西に向かっていた。
 さすがにここには有望な選手などいないだろう。そう思ったとき、目に飛び込んできたのは衝撃的な光景だった。

 Gリーグで好敵手の南海ハーツとあしたばの若手選手が、池袋で密会しているではないか!?
 いや、よく見ると、ただ二人で会っているのではない。彼らは互いに真剣な眼差しでボールを投げ合っている。こ、これは…キャッチボールではないか。
 “週刊文秋”の記者として腕が鳴る。気づいたときには二人への直撃インタビューとなっていた。
 真相はこうだ。

 遡ること、前週(9月30日)に、YBC-67さんから助っ人依頼があり、ハーツの柴川選手、あしたばの長堂選手が試合に参加したとのこと。そこで二十代同士、意気投合し、連絡先も交換していたという。この日は両チームともに試合が中止となり、柴川選手〔左上〕が声を掛け、長堂選手〔右上〕との《キャッチボールプロジェクト》が発足したわけだ。
 双方でピッチングフォームを確認しながら、じっくり球を投げ合う。野球においては、言葉よりもボールの回転や勢いで選手は会話ができるのである。

 将来的には、両チームを背負って立つであろう若手のホープが率先して合同自主トレを行う姿に、記者はちょっとした感動を覚えた。ドラフトの有望選手発掘よりもステキな宝物を手にした気分だ。こうしてチーム間の交流が増えていけば、Gリーグもさらに盛り上がっていくのではないだろうか。

 記者は気分よく、西池袋公園に一礼した。
 おっと、個々の写真は撮れたものの、ツーショットを撮り忘れてしまった。我が雑誌初の野球担当となったのはこの秋から。それまではスクープ班だったのだ。この二人の関係がどこまで進んでいるのか…つい、そんなところに目が行ってしまうのが悲しい性である。
 いや変な臆測はやめよう。
 野球大好き青年たちが、試合中止の午後にキャッチボールのできる公園を探し、白球の軌道を確かめ合う。それだけで十分じゃあないか。

 彼らは次の日曜日にも、同じ西池袋公園で《キャッチボールプロジェクト第2弾》を行うらしい。記者もペンをグラブに持ち替え、足を運んでみようと思っている。

※この物語は一部ノンフィクション(二人のキャッチボールシーン)で、あとはすべてフィクション(妄想)です。
写真提供:三角公園=YBC-67・大島さん、西池袋公園=南海ハーツ・柴川選手
ご協力、ありがとうございました。

【文責・さすらいのY記者】

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